映画雑文 トカ

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あなたがいない世界は"すばらしい"。映画【 すばらしき世界 】ネタバレ感想⚠️

全開ネタバレ記事となりますので 鑑賞されてない方はご注意ください❗️⚠️⚠️

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世に言う完成度が高いって作品を、3つ4つ分 蓄積するぐらいじゃないと この映画の完成度には到底及ばないんじゃないかっていう、それくらいエゲツない作り込み。

正直、その素晴らしさはストーリーはもちろんのこと、ストーリーの行間に隠されたキャラクターの立ち位置だったり、彼らが追い求めているものだったりを、この瞬間 画面に何を映すか、何色のアイテムを置くかっていう映像のチカラでもって表現し尽くしてしまっているところ。これがあまりにも付け入るスキがなくて、笑えてくるくらいにヤバかった。。

【 白と黒、服の色 】

白色の服を着ているのは三上の母親や妻、長澤まさみなどの一般的な社会人であるカタギのひとたち。そして黒い服を着ているのは、殺人後裁判にかけられる三上。三上が葛藤しもがいていくたびに段々と三上の服は 黒と白の2色になっていき、最終的には就職を果たして真っ白な服に、黒いネクタイという所までくる。ただそこで三上は病に倒れ、嵐のなか干していた真っ白な服を取り込めずに亡くなってしまう。それでも三上は最後の最後に、真っ白なコスモスの匂いを嗅ぐことができた。

【 父親を重ねる 】

裏側のストーリーラインとしてここまでやっちゃうのか…っていう、もう驚きと尊敬を感じるほかないんですが、この白黒の話のなかには まだ大賀くんの方のストーリーがほとんど含まれてなくて、大賀くんと役所さん両方が おそらく過去に虐待された子という共通点を持ちながら、大賀くんは役所さんの背中に、不器用で凶暴だった自身の父親の姿を投影してたりして、それはセリフには全くと言って現れていない設定なんだけれど、映像としてはしっかり表現されていて、もう、目に見える文学作品になってました。

大賀くん、【静かな雨】に続いて、またとんでもない設定を隠しまくった超大作映画に出てて、これ同期の若手俳優じゃなくて、モーガンフリーマンとかでも嫉妬するレベルだろと思った。デクなら「ぼくは、作品に恵まれすぎてる…」って泣いて喚くやつ。

【 すばらしき世界って 】

個人的にラストのタイトルが意味しているのは、亡くなった三上を囲む優しい人たちのことを差してるんじゃなくて、あまりにも理不尽で納得いかない社会のルールに真っ向から立ち向かい、そのストレスに殺されてしまった三上に対して、暴力で意を唱えるようなルールを守らない人間が消えてくれて、ようやくこの世は"すばらしき世界"になったね。っていう西川美和監督からのスーパーウルトラ激辛皮肉だと、自分は受け取らさせて頂きました。 こんな世界でも、いい人たちがいて すばらしき世界だね。なんていうそんな生やさしいラストが描きたかったようには見えなかったです。。

曖昧であり、観客 個人個人には明確なラストを抱かせる、この職人技というほかにない、圧倒的で、すこぶる静かな終わり方がたまりませんでした。

【 阿部くん 】

中盤までは普通に距離感を保って鑑賞してましたが、介護施設での仕事が始まってからの「おれの喜怒哀楽、どんだけ同時進行させるんや……」っていう、感情が野党くらい大騒ぎする、辛くて暖かい展開に一気に引き込まれました。介護施設の阿部くんというか、田村健太郎さんの演技、結構な期間忘れられない自信がある。。

この映画の完成度は、近々、科学的に証明出来るヤツだと思いました。

ありがとうございました😊😊