映画雑文よしなり

基本ネタバレしてるので気をつけてください⚠️ Filmarks → よしなり23 【https://mmmryoshe.hatenablog.com/】

えんじ色のマコトくんを探せ‼️【宇宙でいちばん明るい屋根】/ ネタバレ感想。

藤井道人監督の作品は【デイアンドナイト】が無茶苦茶嫌いだったのと【新聞記者】の「悪い奴らは、みんな暗い部屋に置いて、ものすごく悪い顔させる」っていうコロコロコミック読んでる層にまで届きそうな、単純な演出が苦手だったので「もう観なくていいかな」って監督だったんですが、ひょんなことから観ることになりました【宇宙でいちばん明るい屋根】。 タイトル、【世界でいちばん長い写真】に似過ぎだ。。

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今作は、藤井道人監督作品の中でもいちばん悪いところが出てなかったなーって作品でした。とりあえず変な引っ掛かりが少なくて見やすかった。

【桃ばぁ】

個人的に、将来 芦田愛菜ちゃんとバチバチにぶつかり合いそうな、同じジャンルの顔してる主演の清原ちゃんの演技は 今回も普通に良かったんですが、なんといっても桃井かおりさんの どこまでも自然体でいて、個性だけをしっかりと残していく確かな演技力の高さに掴まれました。あの人ずっと何者かと思ってたけど、ただの演技めちゃうまおばちゃんでした。桃ばぁ。。

ストーリーの方はかなり思った通りに進むんですが、いくつか好きなシーンがあったのでなんとか助かりました。

藤井道人演出の難】

ある行動が理由でマイナスな状態にいる清原ちゃんが、傘も差さずに雨に濡れてびしょ濡れになって家に帰ってくる演出とか、相変わらずの藤井道人作品〜って感じでした。 藤井監督の演出は お手本とかを軽く通り越して、コッテコテの親父ギャグ感が出てる気がしてしまって、いつもちょっと笑ってしまう。。、 とりあえず桃井かおりを 登場と同時に空飛ばしたせいで、不思議なおばあちゃんというよりも、幻想のおばあちゃんっぽくなってしまってたのが残念。あの演出ひとつのせいでおばあちゃんが亡くなってるっていう展開に驚きがまったくなくて、かなり勿体なかったです。星ばぁ、空飛んでるっていうのと、見たい人にだけ星ばぁが見えるとかの説明が、なんとも観客への情報コントロールとして邪魔だった気がします。幽霊としてみればいいのか、不思議な人として見ればいいのかどっちつかず過ぎて、オチがそのまま弱くなってました。

伊藤健太郎がバイクに乗って転倒する映画】

そして本作最大の問題が、演出どうたらの笑い話を一撃で粉砕するほどに強烈なあのシーンです。 超がつくほど急に始まる、モブキャラ一切なしの、主要登場人物をフルに使ったバイク事故シーン。。 ものすごく唐突に始まるわ、主要な登場人物が1箇所に集まり過ぎてるわで「それはちょっと都合が良過ぎるやろ!」っていうツッコミを、「お前がバイク乗るんかい!」っていうツッコミに変えてしまう、伊藤健太郎マジック、決死の覚悟すぎて笑ってしまう。 「なにバイクが転倒したの、歩行者のせいにしとんねん」とか「おまえよくこんな役やってて あの時、バイク放ったらかして逃げたな。。」とか、あたまのなか伊藤健太郎バイクひき逃げ事件でいっぱいになっちゃう。こんなんどんなコメディよりも面白いし、これホント当時、監督とか出演者マジでドッキリを疑ったレベルでしょ。。 映画の内容が、ちとタイムリー過ぎました。。

【男子2人の正しい使い方】

構成に関しては 主人公と関わる男の子を、醍醐くんと伊藤健太郎の2人に分けてしまったことで、どちらも終わり方が中途半端になっていて勿体なかったです。 主人公が付き合いたいのは伊藤健太郎なのに、星ばあは「マコトの面倒見てあげて」って言ってくる都合の合わなさ。第一 マコトくん 引っ越しちゃうらしいから、面倒どころか 未来永劫 顔合わせることもない可能性出てきてて、ラストが結構ごちゃごちゃしてました。 もうすこし男子2人の距離を近づけて、2人ともを一気にひとつの結末に導くくらいの展開が正直欲しかった。 そもそもバイク事故の件で、たいぶ近い距離にいたはずの2人なんだから、そこはもっと掘り下げれたんじゃないかなー。。

1ヶ月付き合ってて、えんじ色の屋根のマコトくんにピンとこないのも頷けないし、そもそもマコトと伊藤健太郎が再開したあのシーンから、そのまま3人体制で家を探す流れに持っていかなかったのが普通に考えておかしい。。伊藤健太郎と清原ちゃんが歩いてるのを目撃するなり「おれを轢きそうになった奴が、おれの元カノと何やってんだ」って突っかかってきて、そのことをすぐに謝る伊藤健太郎。それを見て清原ちゃんが「あんた松葉杖ついてる人によくそんなこと言えるね。やっぱり別れて正解だった」ってキレる。そのまま3人で家を探してるうちに仲良くなってきて、手伝ってくれたマコトを家に返しに行ったら、その家がえんじ色で「え…名前、待って。マコトじゃん…」っていうコンパクトな展開に何故しなかったのか。この方がマコトの強気なキャラクターを描きながら、家を探す際に可愛い面を見せたり出来るし、なによりも伊藤健太郎とマコトを繋げられるから真剣にこういう展開にしてほしかったです。 ほんとにこの2人の無駄使い感エグいです。

【まとめる】

マコトくんの話でいうと、桃井かおりがマコトくんに再開して泣くシーンの感情表現がすごかったです。マコトと再開するまでの不安とかが一気に晴れて、心がいっせいに色んな方向を向いちゃって ぐちゃぐちゃになってるのを、顔ひとつで表現しちゃう恐ろしさ。。マジで桃ばぁ、ただの演技めちゃうまおばちゃんだった。。

マコトくんを演じてた、醍醐くんは天気の子の声優やってた時から雰囲気ここまで変わるの?ってくらい違う人みたいでした。清原ちゃんが泣いてしまった時の焦り方、根はいい子なんだろうな感にあふれてて、最高。

清原ちゃんは清原ちゃんで、涙流すタイミングうま過ぎか。。CGで付け足したんかと思うくらい これ以上ないタイミングで涙 流れてて「CGで付け足したんだな」と思いました。

デイアンドナイトにも出てた 山中崇さん、書道教室の先生なんですが、今回なんかオダギリジョーみたいな哀愁出ててカッコ良かった。。 笹松くんも引き続き出演されてたけど使い方めっっ…ちゃ贅沢でした。友情出演か。。??

派手さは一切ない映画でしたが、 主演2人の距離感はなかなか好きな感じでした。

ありがとうございましたー。

【 映画 哀愁しんでれら 】の難解さを解き明かす。ネタバレ感想。

傑作【ブルーアワーにぶっ飛ばす】が記憶に新しい、TSUTAYAクリエイターズプログラムの最新作。 一言で言うと、トップレベルの映画技術を持ってるのに、作品自体がめちゃくちゃ未完成な、惜しいが過ぎる作品でした。。

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アメリを彷彿とさせる掴み】

ド頭から絶対に観客を掴んでやるという製作陣の熱意をバチバチ感じるスタート。音楽のチェイスからして完全に【アメリ】の影響下にあるテンポの良さ。ジャンピエール・ジュネ感を見事にモノにしていて素晴らしかった。 およそ45分間の壮絶に面白い掴みが終わると本編が始まるわけなんですが、そこからもう「ものすごく尺が 足りてない……!」

製作陣としては150%の作品を作ろうとしていることは うかがえて、そしておそらく100%の作品なら難なく作れる技術を持ってることも察せるんですが、とにかく後半の時間が足りてなかった。

掴みの45分間で これでもかと面白い要素を詰め込み、残りの2時間で全てを回収するべき映画。恐ろしいほどにテンポ良い45分間がほとんど後半で爆発せずに終わってしまっている勿体無さ。無理を言いますが、これは2時間50分とかで傑作になる作品。めちゃくちゃ秘めたチカラが見て取れる分ホントに惜しい。。 「これで完成してる!!」とはまるで思えない作品なんだよなー。。

児童虐待田中圭

児童虐待という問題を、外の視点と、当事者の視点の2つから描き、次々に降りかかる他者への理解不足を物語のストレスとして進めていくのはとても面白い構成でした。 児童虐待を肯定しかねないギリギリのラインで攻めるストーリーにはヒヤヒヤで、親じゃなくて子どもがヤバいっていう場合も、もちろんあるよねー…って恐ろしくなりました。 田中圭との焼肉のシーンなんかは、子どもを叩いてしまった時の、その場の状況をまったく知らないのに大声を出して怒りちらす田中圭という皮肉がすごく面白かった。田中圭 腹立つなぁー、でも分かるよ田中圭〜、そう思うよなぁーっていう田中圭に対する居心地の悪さ。 気が動転して肉を焼き始める小春っていう、脚本の細かいリアリティもスゴかった。

田中圭に関しては、自分の裸デッサンを描いてる感じからして 激しい自己愛持ってそうだし、それが自分の娘であるひかりへの愛情に繋がってるのもなんとなく見て取れます。

【ひかり豹変の理由】

娘のひかりの豹変や、直接的なその理由が作中で明言されることはなかったですが、描写を見ていくとだんだん分かってきて面白い。娘のあかりとしては太鳳ちゃん演じる小春が、彼女としてではなく、自分を置いて死んだ"母親"というものに変化したことに嫌悪感があったのかな。。

小春は、娘のひかりが好きな男の子にちょっかいを出してるんじゃないかと推理するけど、ひかりが小春に嫌がらせを始めるタイミングが小春と父親がキスしてるところを見た直後という点からして、自分の好きな男を"奪おうとする女"をひかりは攻撃しているんだなって分かる。おそらく母親への嫌悪感ではなく、こっちが正しいんだろうな。 ベッドで寝てる足が、父親、ひかり、小春っていう、ひかりが2人の間に割り込んでる描写があるのもまさに。 この点、小春がひかりに対して言ってた「心はもう大人」っていうのをキチンと拾ってて無駄がない。ひかりの攻撃性はちょっとぶっ飛び過ぎてるんですけど。。

そして わたるくんの切れ方の演技、めっちゃリアルだったなぁ。。

肖像画の目が青色だった理由】

2度目の線路シーンからは 明らかに妄想パートに入ってて、田中圭一家に完全支配されてしまった小春の姿があれなのかと思うと、いやぁ…怖い。 家族の肖像画で3人の目の色が青色にされてたのは、小春も田中圭側の思考に染まった証なんだろう。前半で田中圭とその娘が 青色の服を着ているシーンが多く、青色 = あの家族の証明ではないのかなと思います。 小春も一応最後まで服の色だけは赤色を着て、あの家族に染まらないよう耐えていたんだけれど、ラストシーンでとうとう小春も青い服のしんでれらになっちゃってて、「終わった。。」ってなりました。。終わった。。

【まとめる】

この作品の感想で【 パラサイト 】に似てるっていうのをいくつか見て、確かに室内の色彩だったり撮り方が似てるところはあったんですが、どちらかと言うと結婚生活へのストレスによって、家の中で1人、どんどん壊れていく感じは【 スワロウ 】っぽかったです。ベットの上で行儀悪く足乗っけてるシーンとか、めちゃくちゃスワロウ。小春のお父さんがこぼれたビールを口で吸いにいくシーンに、少しでも面白さを感じた人は、是非スワロウを見てほしい。。目の付け所が似てるので。。

スタートとラストのセリフがまったく同じなので、小春とひかりそれぞれが同じ考えを持っているとも取れるし、小春もひかりと同じような問題の多い子どもだったとも取れる。

溢れんばかりの映画技術が詰まってる分、未完成を感じてしまう出来栄えで作品が終わってしまってるのが本当にもったいなかったです。めっちゃ面白いんだけどなー。。

ありがとうございました😊

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ニワカ、【アニメ版 エヴァンゲリオン】を初めて観る。

新劇場版4作を観て 感動して泣いた、大したファンでもないニワカである私が、ついにアニメ版にも手を出してみたので、感想をココに書かせていただきます。

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以下、ネタバレの嵐、ご注意🚨

正直、ここまで【 いつ どの時代に放送されてても、伝説になるアニメ 】って初めて見たかもしれない。。

残酷な天使のテーゼ

掴みのオープニングテーマである【 残酷な天使のテーゼからして、突き抜けるほど映像と楽曲の噛み合わせが良いので何度観ても飽きない。飽きないどころか、「はぁねぇがあるぅぅ、こ、とォォォォッ」からの怒涛のカットバックが高揚感を直接刺激してくるので、観るドラッグとは、まさにこのこと。コレほんとにカッコいいが過ぎるでしょ、どんなセンスしてるの。。

エヴァのデザイン 】

ロボットなのに、獣みたいに俊敏なエヴァンゲリオンの設定、2021年に見てもいまだに他の追随を許さない圧倒的な斬新さなんだから、当時のアニメ・漫画クリエーターの心境と言ったらとんでもなかったろうな。。ワンピースの2年前とか?考えられない。。

【 シンジはおれ 】

自分は、新劇を制覇してからやってきた公式ニワカファンなんですが、主人公であるシンジのキャラクターをちゃんと理解するためには、このアニメ版を視聴するのは必須条件でしたね。。新劇場版とアニメ版でだいぶシンジに対する感情が変わりました。言うなれば新劇場版のシンジは、近所で会ったら挨拶する人くらいの距離感だったんですが、アニメ版のシンジはもうオレ。親戚の子とか 実の弟とか、そんなのを全て飛び越えた先の、もうオレでした。あまりにも不憫で、優しくて、思いを言葉にできない、人間味に溢れてるキャラクター。新劇場版のシンジの描写が下手ってわけではないんだけど やっぱり積み重ねた分、かなり違いかありました。嫌な気持ちを隠しながらも、完全には隠し切れてなくて嫌味な話し方になっちゃうのとかすごくリアル。

【 破の流れ 】

ストーリーは長いので だいぶはしょりますが、映画版の流れがそのまま正史だと思ってたので、トウジをアスカに置きかけてあの【破】の流れにしたのは再構築として完璧だなと思いました。普通に見ててもアニメ版のあの流れは無駄があるというか、トウジの投入はそのまま作品の引き伸ばしを感じるくらい必要性が分からなかったです。よりにもよって、なぜトウジ??

【 アクション編 】

第二部とされてる「アクション編」が映画版とアニメシリーズのいちばん大きな違いで、まるごとココを抜いてるのが映画版といった印象。 漫画原作アニメのアニオリ回みたいなテンションと雰囲気なので、楽しめたり 楽しめなかったり。。結局は映画版のメインストーリーである話を 詳細に描いている回のアニメ版がいちばん面白かったです。 シンジとアスカの葛藤描写に関してはまるで濃度が違うというか、メインキャラ3人のなかでも、レイだけ極端に描写が少ないので、エヴァ綾波レイではなくて、エヴァのアイコン=綾波レイっていうイメージに変わりました。 レイは、本編での描写よりも作品のイメージアイコンとしての役割を担ってる部分の方が遥かに大きくてビックリ。レイ、存在感が薄い。。

【 使い回しカット 】

一気見すると後半につれて「見たことあるなぁ…」どころではなく「またこの構図だ。。」っていうレベルで、同じ絵を嘘みたいにスムーズな流れで再利用してて、普段だと「サボるなよ」ってなりそうなのに、脚本の内容をみる限り 明らかに制作側の余裕の無さが見て取れるので、制作の創意工夫として逆に尊敬してしまいます。 再利用するところまで見込んで、ああいう舞台を選んだんじゃないかってくらい使い勝手がいいな、作戦司令室。どのカットでも再利用できる優れもの。

【 伝説のラスト2話へ 】

Qとは別ルートに入っていく、20話のシンジがエヴァに取り込まれてからの内面描写は終わりの始まり。このあたりから明らかに何かがおかしくなっていく。

伝説のラスト2話を見るために頑張って見てきたってのはあったので、ラスト2話の、視聴者の入る隙が一切ないほどの、ATフィールド全開な心情描写の数々には、まずひれ伏す。こんなアニメがテレビ放送されてた時代、文字通りヤバすぎます。 この作品が現代にちゃんとその形を保ったまま残ってくれたの、奇跡です。有害指定とかされてても文句言えないくらい、正直病んでるし、狂気じみてて怖い。 いまこういう演出をしたところで、エヴァンゲリオンに影響されてるなって言葉で片付けられるけど、ちゃんと制作状況のヤバさからこういう演出になってしまったという事実、演出に一切の偽りがないので、怖くて泣けます。 しっかり精神が壊れた状態でこんなもん作ってるの、正直ウルトラ怖いでしょ。お父さんのために子どもが頑張って作ってきたプレゼントが、鶏とイノシシとゴキブリのキメラだったみたいな底の見えない怖さ。ちゃんと壊れて作られてるのが、怖い。

誰も理解出来なかったから、あれをネタ化することで笑いに変えて、みんな理解することから逃げたんだなって思った。

【 まとめ 】

シンジがたった1話でカヲル君に入れ込むの、全く感情移入が追いつかず、Qってめちゃくちゃその辺上手かったんだなって思ったり、 ミサトとリツコ、またケンカ始めたと思ったら、場面転換と同時に仲直りしてて、距離感の変化がコントみたいだったり、 キャラクターが全員、名字が漢字、名前がカタカナで統一されてるので、新劇場版で宇多田ヒカルが選ばれたのは運命だなぁって思ったりしました。

ただのアニメとして片付けるには、どう考えても消化に悪い作品。 これは、だれもスルー出来ないはずだ。。

ありがとうございました😊

【クリーピー / 偽りの隣人】偽りの隣人=西島秀俊…?【ネタバレ感想】

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ビジュアルのカッコ良さと展開の読めなさ、美術の気合の入り方まで不安定なのに完璧な世界観の構築が、ザ・黒沢清! いい加減とも取れる脚本の荒さ、おかしさが全てテーマや象徴性として実は機能してるんじゃないかという方向に向かってしまう、カリスマ性というか完全さを感じてしまうのは、良いのか悪いのか分かりませんがそれこそが黒沢清作品というか。。 キュアとかにもあった説明不足に思える唐突なキャラクターの動きが、全て呪いや神通力によって操られているのでは?っていう不気味さに変換されていく唯一無二な作りがたまらなかった。。

【キャラクターについて】 香川照之の話の通じなさは【ノーカントリー】のアントン・シガーを彷彿とさせるものがあり、言葉は通じるのに話が通じないという外国に行くよりキビしい状況下でのコミュニケーション能力が必要となります。この緊張感と恐怖の糸がいつキレるのかと見てるだけでヒヤヒヤ、ドキドキ……。あれは脚本書いてて楽しいだろうなぁ。。

竹内結子さんと香川照之さんのやりとりとか口角上げたまま恐怖で失神しそうな面白さなんですが、なんだかんだで竹内結子が あの渡してないチョコレートをゴミ箱に放り捨ててるあたり精神的に相当溜まってるのが見て取れて、そのあと香川さんにチョコレートが美味しかったこと感謝されただけでかなり喜んでたりと、このあたりからもう薄っすらと変化の予兆感じさせる作りしててホントに含みを持たせるのが上手い。 一貫して竹内結子演じる奥さんが引いてる常識の線引きが曖昧なので、キャラクターの動きとしては香川照之と張るぐらいに何考えてるか分かんなくて怖いんですが、結末を知ると「そうか もう…」となる楽しさがあります。「妻に会ってやって下さい」とか言って、竹内結子を頼りにしてこっち側に持ってこようと企ててる香川照之も もちろん十分、ヤバイ。

東出くんとかは身長の高さがあるだけでもうキャラクターとしてかっこいいんですが まだ少し活躍するところを見たかったのと、東出くんと西島さんが2人で捜査してる一連のシーンのどこまでも無機質な感じが黒沢清のダークな作風でカッコ良かったです。 川口さんのキャラクターも思いのほか関わりが少なくて残念。あの台詞を最後 西島さんに言わせるための配置だったのかなぁとは思います。 警察の笹本さんが黒沢清監督の【スパイの妻】と同じような役どころで出てきたのも面白かったです。

【ビジュアルについて】 背景に歩いてる人が異様に多く感じる いつもの黒沢演出とか、地下室のビジュアルとか、パラサイトなんかとは比べ物にならない圧倒的な怖さと、異質さ。あのビジュアルだけでお釣りが来るレベルにかっこいい。。美術の不気味さひとつで 日常の世界観からダークファンタジーの世界観に瞬時に移行させる伝家の宝刀みたいな技術。どう考えてたって普通の家からは繋がらない地下室なのにその点にはまったくツッコミを入れず、しっかりみんなでファンタジーを受け入れるの、好き。。 「警察の知り合い、いくらでもいるし」とは言え、まったく協力を仰がないから大変な事態になっていく脚本の柔さも、もはや好き。「コレよこれ」ってなってます。

【考察みたいな】 香川照之さんのキャラクターは「人間の心を持ってない鬼」と評されてたけど、西島さんの方も「人間の心がないんですか?」って確実に狙った被せ方がされていて、この時点でもう2人は同一のような存在になってるのかな。 西島さんもラスト、銃弾が残ってなかっただけで目の前にいた香川照之と女の子、2人のどっちに向けて撃ってたのかも分からないし、監督も意図的に隠したんだと思う。。

竹内結子香川照之側にしれっとすぐになびいたのも、ああ見えて実は元から人間の心を持ってない西島さんに支配されてて 救いのように香川照之の方に行ったんじゃないか…?ラストの竹内結子の叫びも、この悲劇が遂に終わったことに対してではなく また西島さんの方に戻ることへの叫びなんじゃないかなぁ、とか思ったり。。 そうなるとサブタイトルの偽りの隣人すら、夫婦関係ではなく支配関係を隠している西島さん宅のことをいってるのではないかとか思えてきて、深淵を覗いてる気分になってきます。深い深い。。

娘のお母さんが香川照之に撃たれたときはすぐに血が流れてたのに、撃たれた香川照之はラストシーンまで血が全く流れてないあたりホントに人間じゃないんだろうな。

どこまでも語らない、説明しない面白さと想像してしまうカリスマ性のある作風がホントに好みです。

ありがとうございました。

【殺さない彼と死なない彼女】間宮から八千代くんへの誰も知らない間接キス。【ネタバレ感想】

大好きな【逆光の頃】の小林啓一監督作品ということで、いつも観るジャンルとはかけ離れたラブコメ映画に手を出してしまいました。 この映画のレビューによく書かれてた「クライマックスの衝撃」っていうのだけを目的に、ニンジンぶら下げた馬車馬の如く頑張っての鑑賞となりました。

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まず、すべてのラブコメ初心者を振るいにかける撫子と八千代のトークは、まさに観る地獄。。 【ハリーポッターと謎のプリンス】の時の毒飲まされて死にそうになってるダンブルドア先生の勢いで「ハリー、ワシを殺してくれ…」っていう気持ちになります。 基本「死にたい」とかしか言わない おそらくIQより語彙が少ない桜井日奈子と観客を同じ気持ちにさせてしまう、高度な作戦が見事に成功しています。間宮っ…、おれもう撫子が「好き」って言うたびにリモコンの停止ボタン押してディスク放り投げたくなるんだ…、うぇ、助けてくれ…っ。

そもそも衝撃のクライマックス自体は、ラブコメにその要素入れるのかっていう 近年話題になるラブコメがよく用いてる手法で、【君の膵臓をたべたい】とか【君の名は。】が使ってたアイデアをかなりそのままの形で取り入れてた印象でした。 これただ、展開の予想をしようとするとその辺の映画が使ってるアイデアの、どれかひとつを使ってくるだろうと思ってしまうので、この映画みたいに ❶殺すって言ってる方が 殺人鬼に殺される ❷時系列が3組でそれぞれ違う っていう2つのアイデアをどっちも使うクライマックスっていうのが予想つかない理由だと思いました。 「間宮くんの方が死ぬんだろうな」っていう大抵の人が予想したであろうラストの展開を わざと囮にしてもうひとつ、時系列が違うっていう驚きを最後まで必死に守り抜いたラストには「おっ」となりました。 が、君の膵臓をたべたいでも思ったことなんですが、死ぬことをメインテーマに置いてる状態で 思ってもないところから死が現れる展開を殺人鬼の登場でサラッと片付けるのやめてほしい。。

この映画は殺人鬼の動画っていう前振りを 若干時系列へのミスリードにも使ってるからまだいいとしても、恋人が突然死んでしまう悲しさとか何気ない日々の大切さとかの感情が、ぜんぶ殺人鬼の功績みたいになるのホントに映画の作りとしてやめて。。 一般的に嫌われてる「病気で死ぬ」設定よりもタチが悪いです。結局あの殺人鬼にはほとんど触れずに終わるし。扱いがドラえもんの腹から出てくる便利道具みたいになってて、あんまり好きじゃなかった。

土手での終わり方は正直【時をかける少女】や。。って思ってたら、俊足履いた奥華子がものすごいスピードでエンディングテーマ歌い出したので完全に狙っとんがな!って思いました。完全に狙っとんがな。

キャラクターが自己主張しまくる前半戦をどうにか我慢して耐え抜くと、キャラクターが丸くなってきてそのあたりから世界観に慣れ始める。 ラストは青春映画としてしっかり感情に残していくものがありましたが、前半のキャラクターたちに地獄どころが死を感じた方はそこまでして観ないでも良いかなと思いました。あの二重に仕組んでたラストは見ものではあるけれど。

撫子がショッピングモールで買った八千代くんの好きなジュースが、間宮くんの好きなジュースと全く同じだったことからして、3組が時系列としてもテーマとしても少しだけ繋がっていたのは凄かったです。 間宮くんが死ぬ前に桜井さんに投げた言葉が、ラストで桜井さんから撫子に繋がり、それが中盤 撫子から八千代くんに繋がっている。 リストカットしていた桜井さんは間宮くんの存在に助けられ、間宮くんに貰った言葉が、撫子を救う八千代くんへ届けられる。そして、間宮くんと八千代の"好きなジュースが同じ"という描き方。 まさに間接キスのように、口から、言葉で繋がっていく演出は「素敵……」としか言いようがありませんでした。 彼がもう死んでいても、彼のことを知っていなくても、彼の言葉が誰かのもとに届いている。

とにかくずーっと間宮くんはカッコいいし、 桜井さんは今まででいちばん可愛い役貰ってた。 「間接キス?エロ…」のとこがいちばん可愛かったです。 僕のID 佐藤一郎ドットコム? 知らん。

ありがとうございました。

【新感染半島】渡部建VSマスコミゾンビ軍団。⚠️ネタバレ全開。

新感染半島 ファイナル・ステージ、観た。

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傑作【新感染 ファイナル・エクスプレス】の続編として2021年1月1日に公開された【新感染半島 ファイナル・ステージ】は 公開前にまず海外サイトで荒れ、公開後はFilmarksで荒れ、常にどこかで荒れまくってるという印象しかなかったのですが、観てみればそこまでの荒波ではなく若干 逆にちょっと冷めるという、1から10まで製作者に迷惑しか与えない歪なプロセスを辿ることになってしまいました。

公開当初 点数めちゃ低かったので もっと酷いのかと思ってたら、ラストオブアス2の世界観でサバイバルしながら、マッドマックス怒りのデスロードのテンションでクライマックスまで突っ走る、痛快なエンターテイメント作品に仕上がってました。

新幹線というワンシチュエーションでゾンビものを描いたことで傑作になった前作の面白さを、新幹線要素が跡形もなく消え去ってる世界でどう描くのかと思っていましたが まさかこう来るとは。。 続編のていで新感染という名前だけ借りてきて、あとは心機一転 ゾンビ要素だけを残したまま、そこにカーアクションを入れて煮込み、GGでふんだんに味を付けて、潔いくらいにエンターテイメントに全振りな作品が出来上がってました。 現在の韓国映画の最高レベルを提示するかの如く、気合の入ったCGの数々は もはや映画ではなくゲームのそれで、PS4にDVD入れて コントローラー握り締めながら観てた私には、まるで自分がキャラクターを操作しているかのような感覚でした。ただ ある女の子の車両操作能力が明らかにゲームよりも凄いので一気に現実に戻されました。テクニックが過ぎる。。

世界を絞って見せた前作と世界を広げていった今作、面白さは前作の新感染には到底及びませんでしたが、野心を持った意欲作と捉えればなかなかに面白い作品ではありました。 デカすぎる壁であり、同時に挑戦の背中を押してくれる無印新感染の懐のデカさはまるで、マ・ドンソク級。そう、彼がゾンビに倒されたあの瞬間、続編が前作を超えないのは決定づけられていたのだった。。彼なくして新感染を語ることなどできはしないのだ。。!

今作の主人公もカッコいいのはカッコいいんだけど、不倫にパラメータ振らなかった世界線渡部建みたいな顔してて、もちろん渡部建の1200倍はイケメンなんだけど、どうしても渡部建が何度も何度もこっちチラ見してきてダメだった。 どうせならあの 陣内孝則アンディ・サーキス混ぜたみたいな顔したおじいちゃんが主役でも良かったな。。98%なんの役にも立ってなかったけど、無駄に顔がカッコ良くてずっと見てました。ほんと何の役にも立たなかったけど。

そして こども要素があれだけあるのにも関わらず、全くもって前作のこどもに繋げなかったあたり製作者の意地の悪さが出てました。この時点でもう、完全に名前借りただけの続編であることが確定してて、泣く。 前作で生き残ったあの子とマ・ドンソクの奥さんが "今作で悲しい目に合わなかった!めでたしめでたし!"と取るか、続編に登場しなかった=もう悲しい目に遭ってしまっていると取るのか、視聴者側に選択肢を残す とっておきのサービスが用意されてて、そこら辺も続編として舐め腐ってて、わたしはくちびるを血で真っ赤に染めました。悔しい。。 続編というスタンスを取った以上は真実に向き合ってくれ。。。ただし 通常運転よろしく、いつもの韓国映画みたいにあの2人に悲劇の雨降らせようもんならそれはそれで 真っ赤な雨降らすことになるからどっちにしろ覚悟はしとけよ このやろう。こんな形で残された選択肢に安全なルートなどありはしないのだ。。

なんだかんだ もっと上手いことやりくり出来そうなクオリティにとどまってるのは惜しかったし、タイトルがファイナル・ステージってことはもう続編ないんだろうなってしみじみしてたら、なんか前作の時点でファイナル・エクスプレスとかいう めちゃくちゃ たいそうな副題付いててビビりました。ファイナルファイナル詐欺じゃん。。

続編作るごとに前作を少しなかったことにする、ターミネーター方式でこれからも続いていくことを期待しています。

ありがとうございました。

映画【モータル】マイティ・ソーが100均のハンマーを振り回す。

トロールハンター】【ジェーン・ドウの解剖】【スケアリーストーリーズ】などの、かなり楽しめるホラー系作品を生み出してきた近年のお気に入り アンドレ・ウーヴレダル監督が、まさかここに来て 見た記憶と時間消したくなるレベルの作品投げつけてくるとは思わなんだ…。

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予告編見たときからなんとなく身を心配してた作品ではあったものの 確かな実績持ってる監督だから「ここはおまえに任せて先に行くぞ!待ってるからな!絶対におれを楽しませてくれよ!」って言ったら、あいつちゃんと親指立てて「大丈夫任せろ」って返事したのに、まったくもって全然大丈夫じゃねえ。いったいなんだってんだこの有り様は。主人公雷操るって聞いてたのに、どう見ても落雷受けてるじゃねーか。

作品の感想としては、ヒロインであるクリスティーヌが主人公に肩入れする理由がスライムくらい弱いので全然入っていけないのが特に痛かった。ひとつ前の仕事で失敗してるから今度こそは苦しんでる人を救いたいって思いがあるんやろうけど、まずこの主人公は人じゃねえ。雷神トールなのだ。つまり神である。スタート時点で感情移入のハードルが高過ぎる。どうせやるんだったらヒロイン自体に、主人公が覚醒するに至った農場の事件との関わりを少しでも持たせてた方が説得力強くなったし、ドラマも生み出せてたんじゃないかと思う。

全体的に葛藤から行動までの距離が極端に短いので、どうしたって誰にも感情移入できない。そんなどうでもいいキャラたちがテンポよく突き進んでいくロードムービー、早く車大破しねーかなと何度思ったことか。 そういう作りなのでキャラクターの距離感が上手く掴めず、主人公とヒロインの関係性に至っては、間違って30分くらい早送りしちゃった?っていう異様さが常に付き纏ってて、読んで字の如く「観る違和感」。 ほぼ民間人みたいな警察のおっさんが持ってるクルマたった一台で、ケネディより命狙われてそうな主人公乗せてゆっくり移動し続けてるの、ハンパなくおかしくてびっくりします。地下室のシーンも主人公のエリックじゃなくていったん知らん作業員のおっさんと3人で行くの意味が不明すぎてチビるかと思った。

構成がおかしい上に それをうまく脚本に落とし込むことも出来てないため、ストーリーに感情が全くついていかない。ロードムービーのくせに観客を乗せてくれないという、学校でいちばんヤンチャなマッドマックス先輩ですら出来たようなことがまるで出来てない、本当に救いようのない作品。

いちばん最後に出てくるハンマーなんて趣きのかけらも無い100均のおもちゃみたいな造形してるし、どのみちこの主人公じゃマスコミからの軽い精神攻撃でメンタル崩壊して世界滅ぼしそうだったから、メンタルが壊れるタイミングは正直いつでもよかったんですが、そこかよ。いや別になんの文句もありゃしませんが、そこかよ。そこかよ…。 誤ってヒロインに当たったのか、主人公を覚醒させるためにもしかするとわざと当てに行ったのか…、まぁどっちでもいいんですがマルチエンドということにして、少しでも評価上げといてやるかな…。とにかく何がしたかったのか一切分からないまま、澄ました顔してエンドロール流れ始めたのには困った。

10年前のジェームズマカヴォイみたいな顔した主人公がラスト、なんか勢いのままに離れたところからハンマー引き寄せてたけど、こんな流れるようなノリでマイティ・ソーがパクられることあるんですか?めちゃくちゃ人の目がある場所で引ったくりしてるヤツ見た気分になった。嫌だった。

ありがとうございました。