映画雑文 トカ

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【クリーピー / 偽りの隣人】偽りの隣人=西島秀俊…?【ネタバレ感想】

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ビジュアルのカッコ良さと展開の読めなさ、美術の気合の入り方まで不安定なのに完璧な世界観の構築が、ザ・黒沢清! いい加減とも取れる脚本の荒さ、おかしさが全てテーマや象徴性として実は機能してるんじゃないかという方向に向かってしまう、カリスマ性というか完全さを感じてしまうのは、良いのか悪いのか分かりませんがそれこそが黒沢清作品というか。。 キュアとかにもあった説明不足に思える唐突なキャラクターの動きが、全て呪いや神通力によって操られているのでは?っていう不気味さに変換されていく唯一無二な作りがたまらなかった。。

【キャラクターについて】 香川照之の話の通じなさは【ノーカントリー】のアントン・シガーを彷彿とさせるものがあり、言葉は通じるのに話が通じないという外国に行くよりキビしい状況下でのコミュニケーション能力が必要となります。この緊張感と恐怖の糸がいつキレるのかと見てるだけでヒヤヒヤ、ドキドキ……。あれは脚本書いてて楽しいだろうなぁ。。

竹内結子さんと香川照之さんのやりとりとか口角上げたまま恐怖で失神しそうな面白さなんですが、なんだかんだで竹内結子が あの渡してないチョコレートをゴミ箱に放り捨ててるあたり精神的に相当溜まってるのが見て取れて、そのあと香川さんにチョコレートが美味しかったこと感謝されただけでかなり喜んでたりと、このあたりからもう薄っすらと変化の予兆感じさせる作りしててホントに含みを持たせるのが上手い。 一貫して竹内結子演じる奥さんが引いてる常識の線引きが曖昧なので、キャラクターの動きとしては香川照之と張るぐらいに何考えてるか分かんなくて怖いんですが、結末を知ると「そうか もう…」となる楽しさがあります。「妻に会ってやって下さい」とか言って、竹内結子を頼りにしてこっち側に持ってこようと企ててる香川照之も もちろん十分、ヤバイ。

東出くんとかは身長の高さがあるだけでもうキャラクターとしてかっこいいんですが まだ少し活躍するところを見たかったのと、東出くんと西島さんが2人で捜査してる一連のシーンのどこまでも無機質な感じが黒沢清のダークな作風でカッコ良かったです。 川口さんのキャラクターも思いのほか関わりが少なくて残念。あの台詞を最後 西島さんに言わせるための配置だったのかなぁとは思います。 警察の笹本さんが黒沢清監督の【スパイの妻】と同じような役どころで出てきたのも面白かったです。

【ビジュアルについて】 背景に歩いてる人が異様に多く感じる いつもの黒沢演出とか、地下室のビジュアルとか、パラサイトなんかとは比べ物にならない圧倒的な怖さと、異質さ。あのビジュアルだけでお釣りが来るレベルにかっこいい。。美術の不気味さひとつで 日常の世界観からダークファンタジーの世界観に瞬時に移行させる伝家の宝刀みたいな技術。どう考えてたって普通の家からは繋がらない地下室なのにその点にはまったくツッコミを入れず、しっかりみんなでファンタジーを受け入れるの、好き。。 「警察の知り合い、いくらでもいるし」とは言え、まったく協力を仰がないから大変な事態になっていく脚本の柔さも、もはや好き。「コレよこれ」ってなってます。

【考察みたいな】 香川照之さんのキャラクターは「人間の心を持ってない鬼」と評されてたけど、西島さんの方も「人間の心がないんですか?」って確実に狙った被せ方がされていて、この時点でもう2人は同一のような存在になってるのかな。 西島さんもラスト、銃弾が残ってなかっただけで目の前にいた香川照之と女の子、2人のどっちに向けて撃ってたのかも分からないし、監督も意図的に隠したんだと思う。。

竹内結子香川照之側にしれっとすぐになびいたのも、ああ見えて実は元から人間の心を持ってない西島さんに支配されてて 救いのように香川照之の方に行ったんじゃないか…?ラストの竹内結子の叫びも、この悲劇が遂に終わったことに対してではなく また西島さんの方に戻ることへの叫びなんじゃないかなぁ、とか思ったり。。 そうなるとサブタイトルの偽りの隣人すら、夫婦関係ではなく支配関係を隠している西島さん宅のことをいってるのではないかとか思えてきて、深淵を覗いてる気分になってきます。深い深い。。

娘のお母さんが香川照之に撃たれたときはすぐに血が流れてたのに、撃たれた香川照之はラストシーンまで血が全く流れてないあたりホントに人間じゃないんだろうな。

どこまでも語らない、説明しない面白さと想像してしまうカリスマ性のある作風がホントに好みです。

ありがとうございました。