映画雑文 トカ

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【 映画 哀愁しんでれら 】の難解さを解き明かす。ネタバレ感想。

映画【哀愁しんでれら】を観ました。ネタバレ注意⚠️⚠️

傑作【ブルーアワーにぶっ飛ばす】が記憶に新しい、TSUTAYAクリエイターズプログラムの最新作。 一言で言うと、トップレベルの映画技術を持ってるのに、作品自体がめちゃくちゃ未完成な、惜しいが過ぎる作品でした。。

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アメリを彷彿とさせる掴み】

ド頭から絶対に観客を掴んでやるという製作陣の熱意をバチバチ感じるスタート。音楽のチェイスからして完全に【アメリ】の影響下にあるテンポの良さ。ジャンピエール・ジュネ感を見事にモノにしていて素晴らしかった。 およそ45分間の壮絶に面白い掴みが終わると本編が始まるわけなんですが、そこからもう「ものすごく尺が 足りてない……!」

製作陣としては150%の作品を作ろうとしていることは うかがえて、そしておそらく100%の作品なら難なく作れる技術を持ってることも察せるんですが、とにかく後半の時間が足りてなかった。

掴みの45分間で これでもかと面白い要素を詰め込み、残りの2時間で全てを回収するべき映画。恐ろしいほどにテンポ良い45分間がほとんど後半で爆発せずに終わってしまっている勿体無さ。無理を言いますが、これは2時間50分とかで傑作になる作品。めちゃくちゃ秘めたチカラが見て取れる分ホントに惜しい。。 「これで完成してる!!」とはまるで思えない作品なんだよなー。。

児童虐待田中圭

児童虐待という問題を、外の視点と、当事者の視点の2つから描き、次々に降りかかる他者への理解不足を物語のストレスとして進めていくのはとても面白い構成でした。 児童虐待を肯定しかねないギリギリのラインで攻めるストーリーにはヒヤヒヤで、親じゃなくて子どもがヤバいっていう場合も、もちろんあるよねー…って恐ろしくなりました。 田中圭との焼肉のシーンなんかは、子どもを叩いてしまった時の、その場の状況をまったく知らないのに大声を出して怒りちらす田中圭という皮肉がすごく面白かった。田中圭 腹立つなぁー、でも分かるよ田中圭〜、そう思うよなぁーっていう田中圭に対する居心地の悪さ。 気が動転して肉を焼き始める小春っていう、脚本の細かいリアリティもスゴかった。

田中圭に関しては、自分の裸デッサンを描いてる感じからして 激しい自己愛持ってそうだし、それが自分の娘であるひかりへの愛情に繋がってるのもなんとなく見て取れます。

【ひかり豹変の理由】

娘のひかりの豹変や、直接的なその理由が作中で明言されることはなかったですが、描写を見ていくとだんだん分かってきて面白い。娘のあかりとしては太鳳ちゃん演じる小春が、彼女としてではなく、自分を置いて死んだ"母親"というものに変化したことに嫌悪感があったのかな。。

小春は、娘のひかりが好きな男の子にちょっかいを出してるんじゃないかと推理するけど、ひかりが小春に嫌がらせを始めるタイミングが小春と父親がキスしてるところを見た直後という点からして、自分の好きな男を"奪おうとする女"をひかりは攻撃しているんだなって分かる。おそらく母親への嫌悪感ではなく、こっちが正しいんだろうな。 ベッドで寝てる足が、父親、ひかり、小春っていう、ひかりが2人の間に割り込んでる描写があるのもまさに。 この点、小春がひかりに対して言ってた「心はもう大人」っていうのをキチンと拾ってて無駄がない。ひかりの攻撃性はちょっとぶっ飛び過ぎてるんですけど。。

そして わたるくんの切れ方の演技、めっちゃリアルだったなぁ。。

肖像画の目が青色だった理由】

2度目の線路シーンからは 明らかに妄想パートに入ってて、田中圭一家に完全支配されてしまった小春の姿があれなのかと思うと、いやぁ…怖い。 家族の肖像画で3人の目の色が青色にされてたのは、小春も田中圭側の思考に染まった証なんだろう。前半で田中圭とその娘が 青色の服を着ているシーンが多く、青色 = あの家族の証明ではないのかなと思います。 小春も一応最後まで服の色だけは赤色を着て、あの家族に染まらないよう耐えていたんだけれど、ラストシーンでとうとう小春も青い服のしんでれらになっちゃってて、「終わった。。」ってなりました。。終わった。。

【まとめる】

この作品の感想で【 パラサイト 】に似てるっていうのをいくつか見て、確かに室内の色彩だったり撮り方が似てるところはあったんですが、どちらかと言うと結婚生活へのストレスによって、家の中で1人、どんどん壊れていく感じは【 スワロウ 】っぽかったです。ベットの上で行儀悪く足乗っけてるシーンとか、めちゃくちゃスワロウ。小春のお父さんがこぼれたビールを口で吸いにいくシーンに、少しでも面白さを感じた人は、是非スワロウを見てほしい。。目の付け所が似てるので。。

スタートとラストのセリフがまったく同じなので、小春とひかりそれぞれが同じ考えを持っているとも取れるし、小春もひかりと同じような問題の多い子どもだったとも取れる。

溢れんばかりの映画技術が詰まってる分、未完成を感じてしまう出来栄えで作品が終わってしまってるのが本当にもったいなかったです。めっちゃ面白いんだけどなー。。

ありがとうございました😊

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