映画雑文 トカ

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【岬の兄弟】岬にて、何に手を伸ばす❓

「岬の兄弟」を観ました。

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人間、ほんとに追い詰められてると行動を制限する足かせが取れて、やっていいコト悪いコトの線引きが見えなくなりなんでもやっちまう。そんな地平の違う生き方をしてる主人公の行動全てが、僕の目には軽度の知的障がいを抱えているようにも写ってしまった。

1から10まで お金を目的に生きてると、その人間の目はあんな風に映るのか。。

 

この作品けっこう演出がうまくて。

物語上、最初にして最大の絶望のあと、それによって稼いだお金でマックのハンバーガー買って食べて。

さぞハンバーガーが美味しかったんでしょう、その喜びで テンション上がって 家の窓に貼ってたダンボールベリベリに破り捨てて、家の中が光で満たされるシーン。いや全然希望なんて見えちゃいないのに主人公にとっては絶望にやっと差した光だったのか、眩しいくらいの明るさが主人公たちの生活を照らしてしまう。

 

着実に展開を積み重ねていく前半がしっかり上手なので、結構時間かけたかなと思ってたら案外短くまとまっていたのは好印象。

こんくらいの長さでちゃんとまとめてる映画が好き。

 

この映画の設定上、残酷がエスカレートする展開この先に待ち受けていやせんか?…と思いきや、相手もなかなか問題を抱えている場合が多く、

●いじめられている少年

●妻を亡くして孤独死しそうな老人

●身体障がい者の男性と

あえて嫌な予感を取り除く決死の布陣に、製作側による意図的なコントロールを感じざるを得ませんでした。「こっから何か読み取れ」と言わんばかりの演出が、映画好きのスイッチを上手に押してくれます。これはもはや親切設計。「マイナス要素だらけの人たち…。臭うな。。」ってな具合。

主人公たちの問題だけを描くなら 主人公たちを中心にして もっと酷い展開を作るだろうけどもどうやらそうじゃない。

この人達から漂うなんとも言えない空気。主人公たちだけではなく、マイナスを抱えた様々な人たちの問題に、観客の視点や目線を向けさせようとする監督の強い意図を感じました。

 

ところどころの何気ないシーンも実に豊かで、

壊した貯金箱をテープで直してまた使ってたりする。

しあわせな夢を見たあと、主人公がただ水を飲むシーンにしても水をお茶碗に入れてるってだけでそのシーンの重さが全く違う。あまりにも哀しくて哀れで胸が痛くなるシーン。

また…やりたい?って聞くシーンも やけに綺麗すぎる空との対比が効いてて なんだかなぁ… 哀しみの描写が上手い。、

妹がお風呂入ってるシーン から お風呂から出て兄貴と喧嘩するまでのシークエンスも、あのシーンがあるだけでその場の真実味が増す。

怖いもんなし、文句なしの文字通り裸の演技。

安藤さくらさんを彷彿とさせる佇まい、声のトーンと演技力を持った妹役の和田光沙さんは 演技が上手いというよりかは表裏のない、真正面からの表情で、ただただそこにいるような嘘のない演技力でした。

安藤さくらさんを柔らかくした様な可愛い表情がたまに出るな と思ってたら、突然 室井滋みたいなリアリティの顔出してくるのも素敵。さくらさんと室井滋を、足して2で割ったようなひと。素敵。

 

主人公はMOROHAのボーカルが歌という概念消されて、その弾みで熱い心も同時に失ったような顔した松浦祐也さん。時折見せる 無表情なときの顔がめちゃくちゃ良かった。

ただの汚いヤバイ変な人ではない顔。

まぁ、ただの汚いヤバイ変な人なんだけど。

 

設定上、目をかっぴらかれて あれを見せられるような もっとリスキーな展開を予想してしまうけど 意外とそうはならないので、「なんだ、結構大丈夫な映画だな」と思ってしまう自分に驚く。いやいや、これめっちゃやばいから。次々エロくないヌードシーンでてくるし、全然ファミリー映画じゃないから。自動的に万引き家族をファミリー映画に昇格させてしまうみたいな特殊な能力持ってる映画だからなこれ。

 

これ以上やばいと 園子温で、

これ以上優しいと 是枝裕和

 

まりこを見つけたのにも関わらず、主人公が手を伸ばすのは鳴る携帯電話の方という、さまざまな見方ができるラストシーンには他のシーンにない力づよさがある。

その岬のさきには何があるのか。これから先、まだ彼らには深い海が待っているのか。崖から落ち、無事だったとしても そこは海。"岬"とはあまりにも残酷な舞台だった。

 

最初妹を車に乗せてきてくれた人、ラストアライランスのボーカルかと思ったらナガセケイさんという方でした。

すみませんでした。頬こけてる人、好き。